ドストエフスキー / 罪と罰

 
 引き続き、ドストエフスキーです。何だかこんなふうに連続で記事にすると、ドストエフスキー流行ってるっぽいでしょ。

…と、ウェブ界の片隅で呟いてみる。流行ればいいのに!

 わたしにとって「罪と罰」は椎名林檎でした。しかし、それじゃ作家のたまごの名が廃るっていうわけで、読まねば読まねば…とプレッシャーになってた一冊でした。なかなか読めなかった。だって表紙の顔が恐いし…。タイトル重いし。

 だけど読み始めたら止まらない。「白痴」が恋愛ドラマなら「罪と罰」はサスペンスでしょうか。主人公のラスコーリニコフが老婆を殺して、罪の呵責に悩み、警察に追い詰められていく話なのです。冒頭で犯人が分かるパターン。まあ、古畑任三郎みたいな感じですね!(見てないけど)

 真面目な苦学生のラスコーリニコフが、金貸しの欲張り老婆の殺人を行うことから物語は始まる。彼自身の打ち立てた理論によるとその殺人は正義である。でも、やっぱり彼は罪悪感に囚われる。
 殺人の計画を思いつき、それを実行するまでに悩みぬき、実行したあとも情緒不安定になり悩み迷いぬくその過程が、熱い筆で延々と語られる。

 ドストエフスキーのすごさはセリフにあるとわたしは思うのです。場の空気をささっと彩るくらいのセリフなら、ちょっとセンスがある人ならできるけれど、登場人物の魂の声を書くのは本当に至難の業。なぜなら、登場人物のことを深く理解し、喋っていることの何倍もの背景を作者が持っていなかったら、喋れないから。主人公だけじゃなく、誰も彼もが長々と喋り続けるドストエフスキーの小説は、もう神だと思う

 ラスコーリニコフの鬼気迫る独白は読者を当事者の位置まで引き摺り下ろす。まるで自分が彼自身の理論にしたがって殺人を犯したかのような気持ちになってしまう。彼を調べる刑事たち、彼の誠実な友人、彼を愛する妹と母、その他不幸な運命を背負った貧乏な人々。これらの登場人物が、本当に生き生きと描かれている。彼らの数ページに渡る独白セリフは、どの単語だって聞き逃したくないくらいだ。

 などと考えたのは、もちろんわたしだけじゃないらしい。有名な映画監督ヒッチコックさん(すんません、よく知りません)が、このセリフを一言も削れないから映画化はできないと言ったらしいです。それを聞いた当時26才のアキ・カウリスマキが、じゃあ俺がやってやるとばかりに初監督で映画化したのでした。京都会館でその映画を見る機会がありました。実を言うと、わたしはアキ・カウリスマキが大好きなのですよ。いやあ、あのセリフの少ないカウリスマキ映画で、どうやって映画化したんだろうと、わくわくして行ってみたら、

…青年ラスコーリニコフが禿げている…!!!

 わたしのラスコーリニコフ様が…!!冒頭からショック死しそうでした。しかし、ざっくり新解釈で、でもちゃんと「罪と罰」のエッセンスはそのままで、お見事でした。

 比較的、登場人物のクレイジー度が少ない気がするので、ドストエフスキー初心者はこの「罪と罰」から入ってもいいかもしれないですね。

 読んだ当時の読書の記録はこちら

2 Comments

music19836 月 3rd, 2009 at 23:33

ドストエフスキーは、『カラマーゾフの兄弟』が話題になっていたとき、全巻そろえたものの、挫折して、売ってしまいました。その後、『地下室の手記』(でしたっけ?)にも挫折。一度も、一つも読み通したことがありません。
『1Q84』も読み終わったし、『罪と罰』も候補に入れておきたいと思います。
>ドストエフスキー初心者はこの「罪と罰」から入ってもいいかもしれないですね
ということなので。

izumi(admin)6 月 4th, 2009 at 16:00

このブログ初のコメントありがとうございます!無事コメントできることが分かってよかったよかった。
カラマーゾフ、話題になってたんですね。…どうも一足乗り遅れてるわたしですが。
「1Q84」読み終わったんですね!どうでしたか?って、面白かったって聞いても面白くなかったって聞いても、
読みたくなってしまいそうです。
「罪と罰」はストーリーが一本筋なので、比較的読みやすいのでおすすめです。
わたしは「白夜」っていう短い作品からわたしは入りましたが。面白さは「罪と罰」ですね。

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