五感喪失 /山下柚実
(文藝春秋 /1999年発行)
小説じゃなくてルポ。著者はフリーのライター。第一回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞している。文章がしっかりしていて、ただの好奇心や紋切り型の正義感しか見えない上滑りの記事ではなく、独自の完成と視点で問題を掘り下げていく文章がとても好感が持てて面白かった。興味を持ってどんどん読めた。
デスクワークに追われる現代人が、意識しなくなった五感。これらが喪失されている現状や、逆に感覚の刺激を求める行動を起こす若者たちが、テーマごとに描写されている。体に穴を空けることで満たされない自分の埋め合わせをするかのような、ボディピアス。次々と消臭剤が売れていき、無臭の排泄物まで登場する現代の「臭い」過剰反応現象。広がる味覚異常。しかしその味オンチが支えるグルメブーム。
嗅覚、聴覚、平衡感覚、視覚、味覚、触角。
この本を読んでいると、自分がいかにそれらの感覚を普段働かせていないのかに気づかされる。五感を喪失している場合じゃない。読む人の五感を目覚めさせるような、そんな小説が書きたいのに。
ノンフィクションの力を感じさせられた一冊。他の著作も読んでみようと思う。
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