ハチ公の最後の恋人 /吉本ばなな
(メタローグ /1994年発行)
ひっさびさにばなな読んだよ。前に読んだやつかもしれないけど。この幼いとも拙いとも思える言葉を、的確に組み合わせて、すぱんすぱんと物事を描写していくこの文章が本当に彼女独特だ。ひさびさに読んでやられた。なんだ、すげえ、天才じゃないか。
たとえば私の恋人であるハチのふるさと、インドの描写。
(抜粋)
私が逆立ちしたって今までの生活を消せないのと同じに、ハチのふるさとはここではない。
もっと熱くて、乾いていて、広いところ。
景色がよくて、自然が厳しいところ。
静かなハチがいつも人よりどこか豪快な感じがするわけ。ハチの大胆で無垢な感情表現の向こうに広がるもの。
はるかな景色や、長い長い一日のある国。
象がいて、市場があって、すごく貧乏な人と大金持ちと、ひどくあわててる人と動きもしない人と、そういう極端な人たちがいて、どちらも同じ大きな夕日に照らされる国。
高校時代吉本ばななの作品を片っ端から読んでいた時期があった気がする。でもあるとき、もういいやと思って読まなくなったのだ。それ以来ずっと手にしてなかったのだけど。どうして、わたしは彼女のを読まなくなったんだろう。こんなにすごいのに。でも、この本を読み終わる頃にはその理由を思い出していた。
飽きるのだ。
お菓子のような小説。甘くて美味しくて嬉しいけれど、そればっかり食べようとは思えない。一つ一つの文や表現には、思わずメモしたくなるようなはっとさせられる言葉や描写や真理が詰まってるのに、全体の小説としては何だか何も残らない。小説家というよりは、コピーライターなんだと思う。読んでる間は心地よいから、それでいいんだと思うのだけど。まあ、それにしてもばななは天才だ。
といいますか、なんとなーく、この感想文も、ばなな文になってるような……。おそろしや。
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こっちはラスト手直ししてるらしい。
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