渋谷色浅川 /笙野頼子
(新潮社 /2001年発行)
作者自身をモデルにした作家八百木千本が、若い編集者に連れられて渋谷のネットカフェやらクラブやらを取材に行く話。実際の地名も出てくるし、ほぼエッセイ。
笙野さんの書くものは、すごく真面目だ。主人公の千本はいかついふてぶてしい容姿で個性的だし、他の小説にも幽霊やら妖怪やら怪奇現象が出てくる。文章も体言止めの歯切れのいい一見演説調。ぱっと見、奇をてらったとっぴょうしもない作風にも見えるのに、よく読んでみると染み込んでくるのは笙野さんの「真面目さ」だ。もう本当に幽霊に悩まされているのだろうというくらい大真面目だし、文章も実はかっちりとして必要なものを必要なように伝えている。その真面目さが文学だ。
何でもない話でもエピソードでも、彼女が語れば、まるで舞台で一人芝居をやっているように目が離せなくなる。読者に向かって書いている作者だなと思った。彼女の文章ならエッセイでも小説でもまた読みたいと思った。
ちなみにこの本に書かれている時代は、ネットカフェはまだ出来たて。インターネットとは何ぞやというのがネタになった時代。それもなかなか興味深かった。ほんの数年前なのにこんなにも違うのか。若者の文化に触れる中年作家というよくある図式なんだけど、大げさに騒ぎ立てることも声高に批判することもなく、ただただ身に振りかかった災難のように状況を受け止め、自分のこととしてそのまま伝える描写が妙に可笑しく何だかよかった。すっと入り込めた。
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