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フランシス・ポンジュ詩集 /フランシス・ポンジュ (小沢書店 /1996年発行) 「双書20世紀の詩人」というシリーズのうちの1冊。名前を聞いたこともなくて、たまたま図書館で手に取っただけなんだけど、これがとてもよかった。フランシス・ポンジュ。カミュやサルトルが絶賛したフランスの詩人。彼は詩人の目でオブジェクトを分析し描写していく。その描写は、繊細で正確で感覚的で科学的。言葉の力もすごい。彼の物を見る目もすごい。見慣れた世界を一瞬にして塗り変えてくれる。 (以下抜粋) 軟体動物 軟体動物とは一個の存在――ほとんど一つの――特質である。それは骨組を必要とはせず、ただ城壁だけを必要とするのであり、チューブの中の絵具みたいな何物かである。 自然もここでは、原形質に形をつけて提示することをあきらめている。ただ、内側の面の方が美しい宝石箱の中に念入りに収めて、それを大事に思っていることを示すだけなのだ。 だからこれは単なる痰唾なのではなくて、この上もなく貴重な現実の一つなのだ。 軟体動物は、閉じこもろうとする強力なエネルギーをそなえている。本当のことを言えばそれは一つの筋肉、一つの蝶番。一つのドア開閉器と、そのドアであるにすぎない。 ドアを分泌したドア開閉器。軽微に凹面をなす二枚のドアが、その住居のすべてを成している。 最初にして最後の住居。彼はそこに、死の後に至るまで住む。 彼を生きたままそこから引き出す術はない。 人間の身体の最も小さな細部も、同様にして、また同じ力をもって、言葉にしがみついているのだ、――それも互いに。 だが時おり他の存在がやって来てこの墓に侵入するのは、墓の出来のよい場合であり、物故した建立者に代ってそこに定着することになる。 これはやどかりの場合である。 (詩篇「物の味方」より) 「物の見方」じゃなくて「物の味方」。これは読めば分かる。 (編・訳*阿部良雄) |