ペテルブルグの文豪 /J・M・クッツェー
(平凡社 /1997年発行)
ドスト・エフスキーを主人公にした小説。歴史小説というよりも完全にフィクション。設定も現実と同じところもあれば違うところもある。全編主人公は「彼」で語られるが、一人称の小説の印象を残すくらい徹底して「彼」の内面を描き出し、彼を描写しつくしている。息子を亡くし、息子が下宿していた部屋に住む。時折彼を襲うてんかん発作。作家としての名声を獲得しているはずなのに満たされない鬱々とした気持ち。賭博で作った借金から逃れるために別の名を語る。革命の萌芽。重い題材のはずなのに、徹底した一人の主人公から見える世界観がこの小説を不思議な魅力にしたてあげている。本家のロシア小説と違い、物語を少し距離を置いて語っている感じがする。ってか読めずに挫折したんだけどね、ドストの小説は…(--;)。まあいずれ時期がくれば読めるだろう。
クッツェーの書く中年男はとてもいい。腹黒くて苦悩に満ちていてでもその苦悩を自分の内側に閉じ込めて決して外には出さない。読者にだけそっと見せてくれる。その見せ具合がいい。
(訳*本橋たまき)
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