かけら / 青山七恵
(新潮社 /2009年発行)
青山さんは、わたしの中で一押しの作家です。どの作品を見てもまだがっかりしていない。でも、おすすめかっていうと万人におすすめしない。周りの感想を見ている限り、どうやら(熱心な読書家の)若い男の子には「どこがいいのか、さっぱり分からない!」作者らしい。
青山さんは、女ってよく分からない、とか、だから女ってめんどくさいんだよ、とか、言われる「女」の部分を、当時者の視線から丁寧に書き綴っていく。当事者目線なのに、視線は冷徹で、だから読んでいて驚くくらい皮肉が溢れている。でもそれを軽蔑とか嫌悪してるわけじゃなく、冷静に見つめた上で、まあでもしょうがないしこれがわたしだし、という受け入れている感じがする。人に話してもうまく伝わらないし、どうせうざいと思われるだけだと胸に秘めてもやもやしていたものを、白日の元にさらして静かに分析し受け入れてくれるから、読んでいて無二の親友に出会ったような気がする。からだの緊張が溶けていく。男の子が言う「分からない」は小説の技法がどうこうより、このテーマ自体に興味が湧かないってことなんじゃないだろうか。逆に青山さんの小説を好きだという男の子がいたら、友人になれそうな気がする。
短編3つ収録。会話もなく、何を考えているのかもよく分からない父と二人きりでさくらんぼ狩バスツアーに参加する「かけら」。別れた恋人「小麦」を思い浮かべながら、今の恋人と結婚しようとしている僕の話「欅の部屋」、西表島に住む高校生の姪が訪ねてきて数日をぎこちなく一緒に過ごす「山猫」。
「かけら」がよかった。お父さんとの距離、娘の若さゆえの残酷さ、好きと即答できないけど嫌いというわけではない微妙な距離感。居心地の悪さ。「欅の部屋」は僕語りで心地良いお話ではあったけれど青山さんならではって感じはしなかったので物足りない。「山猫」は三人称なのだけど、この短さの中でカメラの位置が結構変わる。一人の登場人物の視点から追っていたのに、いいところで別の登場人物の視点になってしまう。中途半端にしか入れなかった。でも3編とも良質な小説だった。
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