たまたま…… / 大道珠貴
(朝日新聞社 /2005年発行)
大道さんの小説の登場人物って、ものすごい駄目なんだけど、その駄目さを肯定しているっぷりが見事で清清しい。そして、ちょっと不気味。ユーモラスなんだけど、何か不気味。他の小説では味わえないこの妙味、どの作品読んでも今のところ外さない。まあ、好き嫌いはあると思うな。わたしは彼女の作品を読んでいると自由になる。
路上詩人を自称し、道行く人に詩を書いている鉄彦。その実体は奥さんに食わしてもらってる子持ちのヒモなんだけども、主人公はそれを知っててつきあっている。鉄彦は「結婚しよっか」と軽く主人公に言うし、主人公も同意していて、奥さん気分なんだけど、その一方でちゃんと「あっちの世界」があることを分かっている。こんな状況なのに、誰にもどこにも悲壮感が漂わない。この非現実的な感じが不気味なのかな。
この物語の中で一番まともな主人公の妹市子と主人公との会話が面白い。次々子を生む市子にイヤだなあと思ったり、妊婦に嫌悪感を示したり、市子は市子で姉に鉄彦のことを意見するくせに自分は夫と喧嘩をしていたり。生々しいはずの主題も、ユーモアでくるまれている。
この人物造形、どこから生まれてるんだろうな。そして、上手いんだよなあ。会話の間とか、場面の転換とか。そして、ただのユーモアじゃなくて、人物たちへの深い愛に溢れているから、読んでいて体に残るのだと思う。
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