読書の記録

No.362 2010.3.13

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嵐が丘 / エミリー・ブロンテ

(新潮文庫 /平成15年発行)

 あまりに有名なこの作品なのだけど、あらすじを聞いても食指が動かず、でもまあ見つけてしまったから読んでみようと思って読んでみたら、面白かった。1847年にアマチュアのエミリー・ブロンテが男性の筆名で発表した処女長編小説だそうで。物語の行方もさることながら、文字をなぞって、このごうごう吹き荒れるような登場人物たちの一挙一動を再現するのがこの小説の醍醐味なんだと思う。

 性格が悪くて、恨みがましくて、狭量で、激しい。そんな登場人物たちが手加減することなく全力で立ち回るのだけども、なんかもうみんな性格悪いから、誰が誰を虐げようが、まあいっかという気になって、かわいそうとかひどいとか思わなかったのがよかった。

 隔離されたように人里離れて立つ二つの屋敷「嵐が丘」と「鶫の辻」。まるで世界には、ここに住まう人たちしか存在していないかのような独特の息苦しさがある。嵐のイメージもそのせいなのだと思う。ごうごうと吹き荒れて、他に何も見えない、唯一つかんだ光を絶対に手ばなさずに進むしかない。復讐だけを生きがいに燃えるヒースクリフの胸の中には、激しい嵐が吹き荒れていた。

 しかし作者は、なぜこんな話を書いたのだろう。一風変わった感触の小説だった。

訳:鴻巣友季子



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