読書の記録

No.358 2010.3.3

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ポトスライムの舟 / 津村記久子

(講談社 /2009年発行)

「アレグリアとは仕事はできない」が面白かったので、読んでみたのだけど、この作品はイマイチでした。…って前回の読書の記録と同じ出だしにしたりして。いやだって。芥川賞獲った作品だから、今度こそ!と思って読んだ3作目。面白くなくはないし、文章うまいから読みやすいのだけど、さあ芥川賞だ!と思って読んだ人は、小説ってつまんないんだなあと思ったんじゃないかと、二重に残念。

 主人公ナガセは三十路前で、工場のラインで働いてて、友達のカフェでバイトして、パソコン教室の講師をして、生活している女子。ラインの前に立って単調作業を延々していると、いらないことを考えすぎてしまう。そして、

(引用)
「時間を金で売っているような気がする」というフレーズを思いついたが最後、体が動かなくなった。働く自分自身にではなく、自分を契約社員として雇っている会社にでもなく、生きていること自体に吐き気がしてくる。時間を売って得た金で、食べ物や電気やガスなどのエネルギーを細々と買い、なんとか生き長らえているという自分の生の頼りなさに。それを続けなければいけないということに。

 と、いう考えに支配される。おおお、これは面白そうだと思ったのだけど、なぜかこの考えから逃れるために、腕に『今がいちばんの働き盛り』と刺青を彫りたいと思いつめるナガセ。…うむ、いきなり共感できません。この刺青を彫ったら焦燥感に駆られて、もっと有意義なことをするかもしれないという展開かと思えば、この刺青があれば安心して働けるということだそうで。そうかなあ。働き盛りなのにこんな仕事してる場合じゃない、と凹みそうだし、そうでなくても数年して働き盛りが過ぎてしまった…と凹むんじゃないかなあ。だけど刺青は一生残る。ギャグじゃなさそうだし、よく分からなかった。

 しかし、ナガセは舟で一年間世界一周163万円のポスターを見つけて、これに行こうと決意し、刺青のことは忘れ、お金を貯めるために頑張り始める。

 まあここまではいい。このままナガセさんの人生を追ってくれればいいのだけど、途中から離婚した友達や、主婦に退屈して邪魔してくる友達や、親や友達の子や、ライン工場で離婚したくて悩んでる主婦らの人生が語られ始めて、ナガセさんは傍観者の位置に退却。最後は、世界一周旅行に行くのやめて、貯めたお金を身の回りの人たちに有意義に使おうと考えて、物語終了。

 面白そうだったのに。何で逃げちゃうんだろう。

 もう一つ収録の「十二月の窓辺」は職場の女性の上司からのいじめの話。安部公房やカフカっぽいシュールな話ならともかく、P先輩とかQ先輩とかっていう呼称は不思議でしょうがなかった…。顔にPって大きく書いた女性の姿しか思い浮かばなかったよ。ギャグなのかなあ…。それが文学なのかなあ。この話も主人公の葛藤をよそに、いつも話を聞いてくれる頼りがいのある先輩がショッキングなカミングアウトして終了、みたいな。ああ、またずらされて未解決だ!

 もう少し、追いかけるか、そろそろあきらめるか。悩むところです。



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