罪のスガタ / シルヴァーノ・アゴスティ
(シーライト・パブリッシング /2009年発行)
シルヴァーノ・アゴスティはイタリアの映画監督で、小説家としても評価が高いそうで。「裁判官」「被害者」「殺人犯」という3つの短編が収録されている。それぞれ独立した話なのだけど、この3つの視点があることで、表題の「罪のスガタ」が浮かび上がる秀逸な短編集だった。
かつて誰かを殺したかもしれないという記憶にとらわれる裁判官の話。自分を殺そうとしている人間がいると探偵に告げられ、その犯人探しに協力し、ついに殺される日と場所まで確定する「被害者」の話。そして、強く念じるだけで相手を殺すことができる「殺人犯」の話。どれも迫力と人生の悲哀に満ちていて、面白かった。ラストで、どーんと衝撃を受ける。シンプルで的確な文章で、訳も読みやすかった。
(抜粋)
音楽で目覚める朝にはうんざりする。
私は、薄明かりの中で目覚めの時をゆっくり味わうのが好みなのだ。
間もなく、メイドが私を起こそうとドアをノックするだろう。
人生に要らぬ面倒を持ちこまないために、私は結婚しなかった。年老いたメイドと生活している。仕事がない時には近所の公園を気ままに散歩しながら、普段の暮らしについてあれやこれやと考えたりして過ごしている。今日、私は五十歳を迎えた。
誕生日だからといって、私は普段の習慣を曲げるようなことはしない。やるべきことをひとつひとつ落ち着いてこなそうと努めるまでだ。まるで“生まれて初めて世界と向き合う”かのように。
-----「裁判官」より
訳:野村雅夫
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