アレグリアとは仕事はできない / 津村記久子
(筑摩書房 /2008年発行)
「ポトスライムの舟」で芥川賞を獲った人。名前もタイトルも固そうだ…と敬遠してたのだけども、読んでみるとユーモラスでパワフルで行き届いていて、ぴたっとはまった。もっと早く読めばよかった。まだ一冊しか読んでないけれど、ヒロインが男前で媚びないところが絲山秋子の小説に少し似ていて、絲山さんよりももう少し人間に対して明るい希望を持っている感じがする。
アレグリアは最新の複合機なのだが、突然止まったり直ったり原因不明のエラーが起こったりと、事務のミノベの邪魔をする。それでいて、他の男性社員が使うときはエラーを出さずに、有能な機械だと思われていて、ミノベは、誰にも分かってもらえない不満をつのらせていく。
三人称の視点を取って主人公だけじゃなく、他の人の人生まで折りこみ、鮮やかな語り口でストーリーが展開されていく。ただの職場の愚痴で終わらない垢抜けたスマートさがあるし、機械と葛藤するなんて馬鹿馬鹿しいと思われない迫力がある。上手い人だなあと思いました。
表題作以外に「地下鉄の叙事詩」を収録。同じ車両に乗り合わせた人たちの別々の視点から語られる朝の数分間の光景。電車を降りてしまえば何ともないのに、乗っている間だけ、他の人が憎くてたまらなくなる感じ、憎悪や悪意が通勤というシステムのせいで車両の中につめこまれている感じが面白かった。
などと面白がっていられるのは、わたしがこういう苦労の最中じゃないからなんだろうか…。よく分かるけれど、でも、もう少し楽しい気分にさせて欲しいという感想をネットで見つけて、ううむ、と思った。
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