読書の記録

No.351 2010.2.18

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バッテリー / あさのあつこ

(角川文庫 /平成15年発行)

 岡山出身の作家さんで、同じく岡山人のおばあちゃんが「あたしは、あさのあつこさんのファンなんじゃ。あんたもあさのあつこさんくらいになりんさいよ」と言うので読んでみました。元は児童文学だけど角川から一般向けに文庫で出されドラマ化もされた有名な作品。ちなみに女優の浅野温子さんとは別人です。

 バッテリーって何だろう…って思いながら読んでたのだけど、バッターとキャッチャーが組んだコンビのことなんですね。…というくらい野球オンチのわたしでも楽しめました。野球は一つのモチーフとして使っているだけで、メインは、この小説のメインは13才という子供から大人になろうという時期の、まぶしいような、不器用でもどかしいような、心理描写だと思った。読んでいると、この時期のいたたまれない焦燥感がありありと思い出されてくる。

 天才ピッチャーである13才の巧は中学入学を前に、岡山の田舎の都市に引っ越してきた。小学生の中国地区大会で巧のピッチングを見たことのあるキャッチャーの永倉豪は、巧が自分と同じ中学に入るのを知って、バッテリーを組もうと積極的にせまってくる。

 あらすじは少年漫画のようなのだけど、少年漫画の主人公には絶対なれない巧の性格が面白かった。体の弱い弟を冷たくあしらうわ、自分のピッチングの腕に自信がありすぎてワンマンだわ、気立てのよい豪に素直になれないわ、妙にクールで親に対してシニカルだわ。でも、悪いやつじゃないんだよね。自分でも、しまったやりすぎた、って思うのだけど、後に引けないというか意地があるというか。大人になっていくうちに、わたしは事なかれ主義になって、妥協したりごまかしたりしてその場をおさめてしまうようになった。忘れてしまったたくさんの感情を思い出した。

著者のあとがきが面白かったです。

(引用)
『他人の物語の中で人は生きられない。生きようとすれば、自らを抑え込むしかないのだ。定型に合わせて、自らを切り落とさなくてはならない。自らの口を閉じ、自らの耳を塞ぐ。自らの言葉を失い、自らの思考を停滞させる。この国に溢れているそんな大人のわたしも一人だ。』

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