読書の記録

No.346 2010.2.13

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廃墟建築士 / 三崎亜記

(集英社 /2009年発行)

 犯罪発生率の高い七階を街から消してしまおうという運動に抵抗する人々を描いた「七階闘争」、廃墟を人工的に建築する「廃墟建築士」、図書館は夜になると本が飛び回り野性の姿を発揮するという「図書館」、どこから現れたのか何が入っているのか分からない蔵を命をかけて守り続ける「蔵守」の4編が収録された建物にまつわる短編集。

 あらすじだけ書くと面白そうでしょ。でもなあ…。現実ではありえないような出来事を読者の前に具現化するのが小説の力だと思うのだけど、彼の書く小説は残念ながら力が足りないと思う。設定と雰囲気だけでも充分楽しめる人もいるだろうから、好きな人には好きな作家なのだろうけれど、小説を書くわたしは足場の弱さが気になって物語に乗ることができない。現実離れした設定だから乗れないのではなく、現実離れした設定を成り立たせる小説力が足りないから、乗れない。

 デビュー作の「となり町戦争」のときは、淡々と進む異様な世界に無感動な登場人物たちが妙な迫力を出していて、読んでいていろいろなことを考えたけれど、「失われた町」やこの作品を読むと安易にまとめる方向に走っちゃって、もったいないなーと思います。不思議な町や建築の設定を描ききることから逃げて、感傷的な浅いヒューマニズムを貼り付けて、まとまった気になっている。

 デビューしたときに、うおお、おもしろい!!と思った作家さんだけに残念だなあ。どこかで気づいて戻ってこないかなあ…と思いながら、今後も彼の作品を読み続けるのでしょうね、わたしは。

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