なつのひかり / 江國香織
(集英社文庫 /1999年発行)
1995年に刊行された長編小説。江國さんが今のわたしと同じくらいの年に書いたものだなあとか思いながら読みました。主人公は21才の女の子。
神出鬼没のやどかりが不思議な世界に案内したり、ホテルの一室が別の世界につながっていたり、兄の妻と名乗る見知らぬ女が登場したり、少し不思議な世界観だけども淡々とその中に溶け込む主人公。その不思議さは根拠ある不思議さという感じがして心地良かった。ときどき変わった設定だけ振りまいて無責任に放り出して終わるファンタジーもどきの純文学もあるけれど、これはそうじゃなくて、体の内側から出てきた実態のある不思議さのような気がした。現実的な説明はないけれども、作り上げた世界の中では責任持って語り終えたという感じがした。骨格のしっかりした滋味のある物語だと思った。
登場人物が好きだった。兄の妻と名乗る女、めぐの異物感がよかった。彼女は俗っぽく美しくもなく料理も下手で明るく健康的で、詩的なほかの登場人物たちとは全く違う世界の住人。最初は辟易している主人公が次第にめぐに惹かれていくのが、意外で面白かった。
モチーフ的に村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」と近いものがある気がした。兄の妻の謎の失踪(ねじまき鳥では、主人公の妻の失踪)。兄を絶対的に支配する年上の愛人(妻を支配するワタヤノボル)。導いていく不思議な生き物。くすくす笑う謎の双子。そして主人公の漂うような虚無感。
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