読書の記録

No.342 2010.2.1

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裏庭 / 梨木香歩

(新潮文庫 /平成13年発行)

 第1回児童文学ファンタジー大賞受賞作だそうで。まさにその冠にふさわしく面白かったです。

 13歳の少女照美は共働きで忙しい父母にも構ってもらえず、双子の弟を亡くした傷をうまく癒せないまま過ごしている。街には、今は誰も住んでいないが子供達が忍び込んでは遊んでいる、バーンズ屋敷がある。そこには、選ばれた人だけが入れる秘密の裏庭がある。照美はその秘密に呼ばれて裏庭の世界に入り込んでしまう。大きな鏡をくぐった先の世界は、竜もいるし不思議な服もあるファンタジーの世界だけれど、そこで悩み考えていく照美の成長の様子が本当にリアルに書かれている。現実世界でも照美の母と祖母の軋轢や、バーンズ屋敷に住んでいた少女達のその後の様子や、様々な地に足着いた物語が繰り広げられ、物語に現実感を与えている。

 現実とファンタジー世界がリンクするのは、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を思い出した。でも、エンデに負けずこの物語も本当に面白かった。現実から目を逸らすだけのファンタジーじゃなくて、現実の傷をもっと深く見つめるためのファンタジー。そこには醜い感情も渦巻くし、ヒロインは決して純粋無垢ではない。

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