ペンギンの憂鬱 / アンドレイ・クルコフ
(新潮社 /2004年発行)
ウクライナの村上春樹とか何とか言われてるらしいけれど、そんな前評判を知らずにタイトルに惹かれて手に取った一冊。
売れない短編小説家のヴィクトルは動物園から引き取ったキングペンギンと暮らしている。ある日、新聞社から著名人の訃報記事を存命中に書いておく仕事を依頼される。編集長から指定されたいくつかのエピソードやキーワードを盛り込みつつ、叙情的に書き上げた文章は、本人が死んで初めて新聞にデビューすることができる。一定の収入と満足感を得ることができるこの仕事をしていると、長編を書くという作業からますます遠のいてしまう。疑問を抱きながらも編集長に鼓舞されて続けていくうちに、少しずつ不穏な出来事に巻き込まれていく。
ペンギンも含めて、登場人物がとても魅力的。わずかしか出ない人物も色鮮やかで個性的で血が通っている。後半からミステリー小説のように次々と起こる事件の全容が分かってくるので、読むのをやめられない。
この本は新潮クレスト・ブックスという海外の現代の本をセレクトして翻訳しているシリーズなのだけど、装丁がいい。セレクトも素晴らしい。信頼できるセレクトショップみたい。こういう試みって素敵だ。
訳:沼野恭子 |
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