天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語 / 中村弦
(新潮社 /2008年発行)
日本ファンタジー大賞受賞作。明治時代を舞台に、人の心を捉える不思議な建物を作る建築家を主人公にして描いた、三人称の連作短編集。
エンタメっていうには人物描写に焦点が合わさっているし、純文学というには出来事に焦点が当てられていて、歴史小説というにはファンタジー的な要素も混じっているし、ノンフィクションのようなフィクションのような語り口だし、一体これは何のジャンルだろう。どこにもぎりぎり属しきってない絶妙なバランスを保った不思議な温度の小説だった。とても丁寧で誠実で、でも退屈ではない。いやあ、何でしょうねえ、これ。面白かったです。いい小説だと思った。これでデビュー作って、すごいなあ。ファンタジー大賞はレベル高いです。
今、建築に関する企画を準備していて、その関係で、一体建築って何だろう…と悩んでいます。参考になるかなと思って読んでみました。建物って大きすぎて何だか手に負えない気がしていたけれど、住む人の哲学も歴史も思いも未来も現在の生活もすっぽり包み込む、わたしが思っているものより、もっともっと有機的なものなんだろうな(もちろん材料は無機的だけども、概念として)、と、この小説を読みながら思った。 |
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