小説 中江藤樹 / 童門冬二
(学陽書房 /1999年発行)
学校の科目の中で苦手なのは社会でした。特に歴史。しかも日本史。誰が天下とったとか、おっさんたちの物語とか全然興味なーい。とか思ってるうちに、気がついたら理系の道を進むことになってましたが。
別の仕事で中江藤樹のことを書くはめになり、日本史で習ったじゃんと言われても「誰それ?」状態だったわたしは小説なら何とか読めるだろうかと思って、歴史小説に初めて手を出してみました。(司馬遼太郎は一冊だけ読んだことがあるけど、それは歴史というか忍者ものだった)。
誰が天下を取って世の中がどうなって、誰が飛ばされて誰が躍進して…と、まあサラリーマン的な事情が延々つづられていて、やっぱりつまらないと投げ出しかけたけれど、主人公の中江藤樹の生い立ちや人柄が分かっていくうちに、それらの背景も納得できて面白くなった。うーん、わたしも小さいときに歴史小説やら歴史漫画やらをもっと読んでいたら、こんなに社会科嫌いにならないで済んだのかも。
章が変わるたびに、前の章の要約みたいな繰り返しがあったり、小説なのに作者のコメントが入ったり、慣れるまでは読みにくかったけれど、慣れると物語風の語りを交えた人物伝だと思えるようになった。戦をやめてこれからは平和に世を治めよう。そのためには武士も学問が必要だという家康の方針にしたがって、出世のためだけに形だけの学問をする武士たち。それを憂いて、真の学問を追及すべく、武士をやめ、故郷の滋賀に戻り、小さな塾を開いて人々を教育し、後に近江聖人と呼ばれた中江藤樹。少々神経質で融通のきかない人柄も、お上の方針に右往左往する時代背景も、生き生きと描かれていた。小説を読むと、まるで自分が見てきたかのように「知ってる」と思えるから、小説の力って不思議だ。
|
|