読書の記録

No.311 2009.8.17

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一瞬の光 / 白石一文

(角川書店 /平成12年発行)

 ちまたで話題になっていて直木賞も取った白石さんですが、読んだことないので読んでみました。

 美形で、社長のお気に入りで、美人の彼女(社長の親類)がいて、出世頭で、金もあって、喧嘩も強い、エリートサラリーマン(38歳)が、家族から暴力を受けてトラウマを抱えた20歳の女の子を兄のように面倒見て見守るうちに、自分を分かってくれるのはこの子しかいない、そして分かってあげられるのも俺しかいない、と思い込んで終わる、とても気持悪い話でした…。

 うーん。中年男のファンタジー小説なんだろうか。作者の意見が押し付けがましいのと、主人公の考え方がいけ好かないのと、登場人物が主人公の都合のいいように操作されていって人間味がないので、何だかなあと思いながらとりあえず全部読みましたが。

 暴力で解決するのがかっこいいって時代でもないしなあ。20歳の女の子のまだ若い彼氏を、お前役に立たないからどっか行けばりに追い払って、金と権力で解決させるのもどうかと思うしなあ。社長が裏切って、信頼してた上司が希望を失って自殺して…ってこのへんは、サラリーマン的には、忠臣蔵的萌え展開なんだろうか。20歳の女の子に手を出さず、ひたすら手助けする。恋人に嫉妬されて、そういう関係じゃないのに分かってくれないって嘆くとことか。なんというかねえ。ファンタジーですよね。

 最後、主人公の大切な存在である20歳女子まで怪我で意識不明になってしまう。もう、主人公のヒロイズムを完結させるためだけとしか思えない展開。こんなことを言ったらオカルトっぽいけれど、わたしは小説の登場人物は物語の中で「生きて」いると思うんですよね。それを作者の都合だけで勝手に殺す物語が世の中にはあって、そういうのが大嫌い。で、そういうのが大流行したりするから、もう、きーってなる。自分で瀕死の状態に痛めつけといて観客の前に放り出し、ほら今から死ぬよ感動しなさい、というような物語。

 おじさんたちにとっては、言いたいことを代わりに言ってくれて、したいことを代わりにしてくれる主人公は胸がすくんだろうな。まあ、毎日お仕事大変ですから、そのくらいの夢は見てもいいのかもしれない。

 あれ、今気づいたけど、これ基本構造は「ガラスの仮面」と一緒じゃん…!金持ち美形社長・真澄さんには美人で金持ちの彼女がいて、でもマヤのことが気になって、マヤには若い恋人・桜小路君がいるけど、イマイチ頼りにならなくて、いざというときには真澄さんに追い払われて…!
 そうか、白石一文の小説は、中年男子風少女漫画なのか。


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