読書の記録

No.305 2009.5.14

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いつかパラソルの下で
 /森絵都

(角川書店 /平成17年発行)

 初めて読んだ作家だったけれど、面白かった。文章が軽快でリズミカルで読みやすい。話も魂が入っててサービス精神に溢れてて。何より出てくる人物が本当に魅力的だった。

 事故で死んだ父親の一周忌の相談のために集まった三兄妹が、堅物で何も語らなかった父親のルーツを探そうとする話。父親から早々にダメだとレッテルを貼られて勘当状態だった兄と私。上二人を見て父親に気に入られるように良い子で育った妹。一家を取り仕切っていたのに、父が死んでどこかぼんやりとおかしくなってしまった母。それぞれの個性が絡み合い、笑えるし、じんとくる話になっている。おまけにちゃんと地に足着いた感じがした。

 児童文学出身だそうで。児童文学出身の人が書いた小説ってのは、本当に「うまい」なあって思う。人物に血が通ってるし、独りよがりじゃないし、安心して楽しませてくれる気がする。

 しかし、冒頭からエロ描写でびっくりした。でも、読んでいくうちに冒頭の印象は薄れていくし、後の雰囲気にも全然合っていない。というか、びっくりさせる以外の効果を成してない気がする。もう少し、ぴったりな冒頭シーンだったら、最初を立ち読みしてから買う読者はもっと増えそうな気がした。なんだろう、これは児童文学じゃないぜという宣言なのかもしれない。





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