読書の記録

No.302 2009.4.21

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彼女について
 /よしもとばなな

(文藝春秋 /2008年発行)

 ★2つ。この読書の記録で低い評価が珍しいのは、面白いものばかり読んでるわけでも、わたしの評価が甘いわけでもないのです。面白くないと思ったものは途中で読むのをやめるから、ここに記録されないというだけ。よしもとばななは少女時代に読んだけれど、最近はずっと離れていて、でも親しくなった子が大好きだというので気になっていた作家。最新作が出たので読んでみたんだけど、一体これはどうしたものやら…と腕組したくなるような小説で、途中で何度も読むのをやめようかと思いながら最後まで読んでしまった。最後まで読んでしまったのは、何だかこう、作者の自信に押し負けられた感じで。これは素晴らしい物語なんだということを信じて疑わない作者のきらきらした純粋さに負けて読み終わった。

 ばななっぽい言葉、ばななっぽい展開は散りばめられてるのだけど、芯がないというか魂が入ってないというか、説明ばかりで物語られてないというか、ちゃんとした小説としても不完全というか、若い女の子が友人に回すようにノートに書いたような小説だったと思う。それだけならまだいいけれど、ところどころに挟まれた説教臭い文にがっかりする。

 でも、好きな人は好きなんだろう。アマゾンのレビューを見ても、ぞっとするほど熱のこもった感想が溢れている。読むのがつらかった、感動した、わたしもこんなふうに生きなくちゃと思った、言葉が大好きだ…etc。わたしは、ばななという作家が苦手というわけじゃなくて、過去の好きだったばなな作品に対して、この新作は何て空っぽなんだろう、と思って愕然としたんだけど、彼女たちは、ばななが与えてくれるものなら何でも有難がるみたいで気味が悪い。

 つらい物語だった、と後書きでばななは語っていた。そのつらさが少しも伝わらなかったわたしは、彼女がこの物語を少しも疑うことなく確信に満ちて書いているということだけは分かった。盲目なほどの確信を持った人というのは、ある意味魅力的で、こういうの、カリスマっていうんだろうな。教祖様みたいだ。小説としてどうこう、文学としてどうこう、ではなく。ばななの文章を求めてる人たちがたくさんいる。本は売れるんだろう。それも作家としての在り様なんだろう。





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