命 /柳美里
(小学館 /2000年発行)
苦手な作家は誰かと聞かれたら、真っ先に柳美里が思い浮かぶ。面白くない、とかつまらないとか、読む気がしないとか、そうじゃなくて、読んで気になってすごいと思うんだけど苦手、という感じ。今まで、小説を3作読んだ。凄みがあるし、惹かれるのだけど、嫌なものが残る気がした。物語の底にあるものが「憎しみ」で、それが未消化なまま横たわっていて、作者のそのものの何かが物語にときどき登場して、それがごつごつしてて、生臭い異臭を放っている気がした。それが苦手だった。
表紙に作者と子供の写真がどどーんと載ってて、赤裸々に自分の身に起こった出来事を描いたこのシリーズは、随分話題になったけれど、読みたくもないと思って積極的に避けてきた。自分が前に出すぎて、周りの人たちの迷惑を顧みずネタにして、あちこちでトラブルを引き起こしては戦っている彼女のスタンスが苦手だったから。
でも、ふと、最近になって、そんなふうに生きざるを得ない柳美里という人間がすごく気になってきた。その不完全さ、違和感、衝突、憎しみ、そういう業のようなものを面白いんじゃないかって思ってきた。彼女は何も隠さない。独りよがりなところも、めめしいところも、誰かと対立した様子も、憎しみも、愛も。
妻のある男を愛し、その相手との子が生まれ、相手に振られる。慕ってた師が癌で死ぬ。その実話を感動しただ、しないだと騒ぐのは何だか違うような気がした。ただこの本に赤裸々に焼き付けられている、柳美里という人間のどうしようもなさを、わたしは面白いと思った。誰もが持っているけれど人には隠しているどうしようもなさを、ここまでそのまま書いてしまう彼女が、気になる。もっと読みたいと思った。四部作、次も読んでみることにする。
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