読書の記録

No.296 2009.2.22

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白蛇教異端審問
 /桐野夏生

(文藝春秋 /2006年発行)

 桐野さんのエッセイ集。エッセイは苦手らしい。あまり書かないらしい。デビューしてから10年間、いろんな雑誌に寄稿したエッセイや書評やショートストーリーや日記やらをかきあつめて、ようやく一冊の本になったのだそうだ。

 確かにエッセイそのものは、読んでいて笑えるとか雰囲気に癒されるとか、いいこというなあとか、そういう感じではないんだけれど、この本には桐野夏生という作家の10年間がぎゅっと詰まっていて、生々しくてはらはらした。

 直木賞をもらう前のこと、もらったあとのこと、仕事のこと、腹が立つこと、匿名で批判されたことへの反論文、作品の取材の裏話、中国を舞台にしたショートストーリー。

 語り口が独特とか上手いわけではないかわりに、読み続けても飽きない。うまいこと言ったり、うそぶいたり、流したり、そんな箇所はどこにもなかった。不器用でごつごつした文章だった。身から切り出され搾り出されたものしか書かれていなかった。誠実な人なんだろう、と思った。





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