読書の記録

No.293 2009.1.3

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デッドエンドの思い出
 /よしもとばなな

(文藝春秋 /2003年発行)

 十代の頃読み漁ってた女性作家の多くは、今は遠のいて読まなくなってしまった。新作が出てもチェックしなくなった。でも、薦められたり、この作者が好きという話が出たりすることが多くて、また読んでみようかなと思って読んでみました。

 片思いだったり、すれ違いだったり、ちょっぴり悲しい恋の話ばかり集まった短編集。死んだことに気づかず仲むつまじく暮らし続ける老夫婦の幽霊が出てきたり、八つ当たり犯罪に巻き込まれて死にそうになったり、と、恋だけじゃなく、死というものがもう一つの登場人物のように、そんなに深刻でもなく出てくるのが、ばななっぽい。生きてるって何だろうな、そんなことをぽかーんと考える。そして、恋の切なさに泣く、そんな小説。

 本当に独特な文章だなあと思う。今でこそ、携帯小説なんかで珍しくなくなったかもしれないけれど。一文一文、声が聞こえてくるような、ゆるくて甘い、ひとり言のような文章。最初は甘くて甘くて辟易したんだけど、傷つくような思い出したくないような出来事があった日、その文章が優しく体に染みこんでするすると栄養になって波立った心が落ち着いていくのを感じた。優しくて時には毒舌な気を許した友人に話を聞いてもらっているような気がした。

 また他のも読んでみようかな。


(文庫)


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