猫と庄造と二人のおんな /谷崎潤一郎
(新潮文庫 /昭和26年発行)
ずっと前に古本屋で買ってた本。ふと手に取ったら、つるつると読み終えてしまった。
谷崎の中編。タイトルどおり、猫と庄造と二人の女の話である。
嫌味ったらしい丁寧口調の女の手紙文から、物語は始まる。夫を奪われた元妻品子が、今の妻福子に、夫の飼ってる猫リリーを譲ってくれと切々と訴えるのである。あなたはわたしから全部を奪ったのだから、せめて楽しかった生活を思い出しながら猫と一緒に暮らしていきたいという、一見しおらしい論理だが、福子は相手が何を企んでいるのかと疑い、決して心を許さない。一方で、夫、庄造の猫へ注ぐ愛情は福子に嫉妬心を起こさせるほどで、品子の思惑通りになるのは癪だと思いながらも、あまりの溺愛っぷりに業を煮やし、猫を品子に譲ってやらないと、自分が出て行くと福子は宣言する。
しょうもないストーリーなのだけど、そのしょうもなさが本当に面白い。母と妻の間でおろおろしながら、猫を端から見て気持悪くなるほど可愛がっている庄造の駄目男っぷりや、元妻を気に入らなかった姑が策略を練って品子を追い出し、持参金が抱負な福子と結婚させる欲深非人道っぷりや、復讐に燃えて策略を練り、その策略のためだけに好きでもない猫を引き取ろうとする品子の執念深さや、尻軽で我侭で洗濯もできない福子の駄目女っぷりやらが、読んでいてとても面白い。このしょうもない人たちの間を、ひらひらと可憐に行き来する美しく愛情深い猫、リリー。
会話を多用した文章の中に、それぞれのしょうもなさがありありと描かれている。リリーもまた妖艶な女のように魅力的に描かれている。読み終わって
はっとする。ああ、「痴人の愛」を書いた谷崎だもの。男を翻弄する猫を描くのは得意だろうな。
ご近所のゴシップを聞くように、わくわくと読めた。しょうもない中をじたばたと生きるしかない人間の物悲しさを感じたが、読み終わって、なぜか明るいすがすがしい気持が残った。
あ、あと猫好きには堪らない小説です。猫の描写が…!
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