なんとなくな日々 /川上弘美
(岩波書店 /2001年発行)
小説家になったらエッセイだって引き受けねばならぬ。しかしエッセイってどうやって書くんだろう。というわけで、エッセイもあれこれ読んでみようと思い始めました。一続きの長い小説と違って、それほど集中しなくても読めるし、寝る前にぽつぽつ、電車のなかでぱらぱらと言った感じで読めるのがエッセイのいいところだなあ。何だ、面白いじゃん、エッセイ。
というわけで、川上弘美さんのエッセイです。どうやら、初めてエッセイを書いた時期のが収録された単行本らしい。なんとなくな日々というタイトルにふさわしい、日々のちょっとしたことをユーモラスに、ぽつんぽつんと語っている。元々載せてた媒体によって文体は違う。新聞だったらちょっと固いし、インテリア系の雑誌だったら親しみやすい感じだし。さっすがだなーと思って感心してたら、あとがきにこんなふうに書いてあって、急に親近感というか勇気付けられるというか、そうか読んでよかったなあと思った。
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(あとがきより引用)
若いころから小説家になりたかったのですか、という質問を、ときどき受けます。
なりたかったです。
と胸を張って答えたいのですが、実は、あんまりなりたくなかったのです。
完成された小説というものは、一篇でいいから、書いてみたかった。でも、小説家という職業につくのは(そういう職業がほんとうにあるとして。実は今でも自分がそういう職業の者であるかどうか、曖昧なこころもちなのではあります)、怖かった。
なぜ怖かったかというと、世の小説家というひとびとは、小説だけでなく、エッセイというものをも書かなくてはならないみたいだったからです。大好きな日本の小説家は、どのひとも、小説だけでなく、含蓄のある、またユーモアにあふれた、エッセイを書いているではありませんか。
小説は、なんだかかんたんに書けそうな気もしたのです(それはおおまちがいでしたが)。でも、エッセイって、ほ、ほんとのことを、身辺のことを、機知にあふれたことを、か、書かなくてはいけないんでしょう。そんなものは、か、書けっこないじゃなりませんか(わたしは緊張すると、舌がもつれます)。そういうわけでわたしは、小説家になりたいけれどなりたくないという矛盾した思いを、長の年月いだきつづけてきたのです。
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気取らず、奇をてらわず、すとんすとんと体におさまる言葉で語られる。読み終わると、じわっと温かくなる。冬の日のしょうが湯みたいな、そんなエッセイ。
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