読書の記録

No.284 2008.8.11

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イエロー
 /松井雪子

(講談社 /2003年発行)

 前に読んだ「恋蜘蛛」はミシンで遊園地のイベント用の衣装を作っていたけれど、今度は化粧品を売る売り子で女の子の顔を作るのが職業の主人公でした。職業自体はそれほど特殊なものではないけれど、仕事の描写が面白い。描いた目や口や眉を忘れないために、頭の中に木を一本植えて、その枝先に描き終えた目や眉を実らせていくのだそうだ。

 現実か非現実か、正気か狂気か、ぐらぐら揺らいで訳が分からない世界ではある。だけど、その中心には可憐で切実な女心があって惹かれる。訳分からなさに身を委ねて一気に読み終えた。

 初出は「群像」。横田さんの(世界記録)といい、群像の好みってこんなのなのかな。世界を力の限り破壊して、もう一度築き上げるような、そんな小説だと思った。





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