私の男 /桜庭一樹
(文藝春秋 /2007年発行)
先日直木賞獲られた作品です。今頃って? いやいや、本ってのは流行で読むものではないですよ。流行り廃りがないのが、本当のよい小説です。とか言いつつ。
かなりよくできた小説でした。面白かったです。こんなに安心して心から楽しんで読めたストーリーテイラー系の日本の作家さんは、桐野夏生さん以来かも。直木賞レベル高いなあ!
父と娘の近親相姦というテーマはかなりグロテスクなのですが(娘的に)、そのグロテスクさから目を逸らさず真摯に書いているのがよかった。父も娘もそれぞれの切実な理由があって、それが伝わってくる。全部で6章に分かれていて、順番に時間が遡っていく。語り手も、主人公である娘「花」が年齢を変えて三回登場するが、他は別の人物であり、時間が遡っていくという性質上、一旦喋り終わってしまうともう登場して喋りなおすことができないという特徴があって、それなのに世界の全容が完璧に描き出される。かなり緻密に構成された小説だと思った。
謎を引っ張りながら最後まで読み進めさせるエンターテイメントの手腕と、一人一人の登場人物が少しも定型的でなく弱かったり強かったり汚かったり尊かったり、センセーショナルな内容なのに感情移入することが出来る人物ばかりで、はらはらしながら、時には傷つきながら読み終わりました。
謎を引っ張り、スポットを当てる人物を変えながら話を進め、なおかつ一人一人の行動が心から納得いくくらい生々しく人物の心情に踏み入って書いている、大げさに言っちゃうと、これは「カラマーゾフの兄弟」のような小説だと思った。他のも読んでみよう。
amazonの低い評価を出してる人の感想見て、「えー」と声を出してしまった。まあ評価がまっぷたつに分かれたってのは、いい作品だなあと思う。内容のあれこれはともかく、文章も演出も構成も人物もよく練られた、そして魂の篭ったレベルの高い作品だと思いましたよ、わたしはね。
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