読書の記録

No.274 2008.6.21

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やさしいため息
 /青山七恵

(河出書房新社 /2008年発行)

 文藝賞でデビューして、二作目で芥川賞受賞で、まだ25才。結構すごい経歴なんだけど、イマイチ騒がれなかった気がしますが。芥川賞受賞作「ひとり日和」が面白かったので、この新作を本屋で手にとってみた。ぱらぱらとめくって、冒頭の文章に引き込まれる。うーん、やっぱこの人うまいと思うのですわ。

 表題作「やさしいため息」は、恋人もなく友達もなく、ただ淡々と事務員の仕事をこなし、会社の人からの誘いは断っているうちに来なくなり、いざ誰かと関係を持とうとしても上手くできない、20代半ばくらいの女の子が主人公。奔放に生きて周囲に心配ばかりさせている弟が突然居候することになることで、自分の人生のつまらなさが際立って鬱屈していく。

 青山さんの書く物語は、本当に小さく狭い。だけど狭いからこそ、普段スポットが当たらない地味などこにでもいそうな普通の女性の苦悩手前の違和感みたいな微妙な感情を、ものすごーく丁寧に拾い上げる。共感できない人には退屈な話なのかもしれないけど、彼女でしか書けないことを書いていて、彼女の物語でしか癒せないものを癒してくれるなあとわたしは思いました。

 抑制の効いた文章。でもほのぼのと明るい。もっと悩んだほうがいいんじゃないかと心配になるくらい割り切って淡々とつまらない生活を暮らす主人公のストイックさには何だか希望のようなものが見える気がした。  





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