読書の記録

No.270 2008.5.27

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夏と夜と /鈴木清剛

(角川書店 /2006年発行)

 好きな作家は、と訊かれたらこの人を挙げるかもしれない。おすすめとかうまいとか尊敬とか、そんなんとはまた違って、すごいとりえがあるわけじゃないけど、友達としてつるんでいたいような、一緒にいたら落ち着いて楽しい。わたしにとってそんな小説を書く人。彼の書く人物が好きなのかな。

 で、新しい作品だ!ということでわくわく手に取ったんだけど、これはあまり好きになれなかったです。残念。

 主人公の「僕」は妻と一緒に自宅で服飾の仕事をしている。三十二歳。今の生活に特に不満もないし、妻のことも愛しているが、専門学校時代に友人として一緒に過ごした二人の女の子が忘れられない。一人は事故によって死んでしまった。そのことでもう一人の女の子とも何となく疎遠になってしまった。ある日、デパートの宝石売り場で、疎遠になっていた女の子「和泉みゆき」に出会う。和泉は、死んでしまったもう一人の女の子スウちゃんに出会ったのだという。「僕」は、半信半疑でみゆきの言うとおりスウちゃんが出るという森の小さな小屋に出入りするようになる。

 うーん。生半可に幽霊ネタを使うと後始末が大変だよね。なんとなーく、騙されたようなごまかされたような気分で終わってしまう。僕と妻との関係も、二人の女の子との関係も、スウちゃんの秘密も、和泉の気持も、何もかも解決されずに終わってしまった。

 主人公はなぜか、年下の妻相手にでも丁寧語で喋るという設定なんだけど、それがずっとぎくしゃくと物語の足を引っ張っていたような気がしました。彼の生き生きとした会話が好きだったのにな。主人公のことも、他の登場人物も、ストーリーも、未消化なまま終わってしまった。でもまあ、退屈はせずに最後まで読めたかな。

 文芸誌「野性時代」に二回に分けて掲載された作品だそうです。




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