読書の記録

No.260 2008.2.17

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平気でうそをつく人たち /M・スコット・ペック

(草思社 /1996年発行)

 副題が「虚偽と邪悪の心理学」。精神科医である著者が、実際の臨床例を交えながら「邪悪」とは何か、どうしてそれが起こるのか、どんな場面で問題になるのかを語る本格的な心理学本でした。自分の見栄のために子供を振り回したり、本人は愛情を注いでいるつもりでも傍から見たらでたらめだったり、治療の必要があることをどうしても認めようとしなかったり、こちらの言ったことを自分の都合のように解釈しなおしてしまう、そんな人々が出てくる。彼らは社会的には成功し、決して病気というレッテルを貼られることはないだろう。だけど、無意識下に抑圧された何かが子供への虐待や自身の神経症などを引き起こしてしまう。問題を解決するためには、まず自分の邪悪さに目を向けてそれに立ち向かわないといけないが、彼らはそれを見栄や虚栄心やナルシシズムのために絶対的に拒否する。子供の心より、自身の見栄を優先する。

 難しいテーマだと思った。著者も書いているように、誰かに「邪悪」というレッテルを貼ることは相手にとってもこちらにとっても快いことではない。そして当の本人はその邪悪さに気づいていないし治して欲しいとも思っていないので平然としている。そんな彼らがどうして邪悪でなぜ治療の対象にすべきかを読者に伝えるのは一苦労だと思う。だけど、実際の臨床に基づいた会話が豊富に盛り込まれているおかげで、読者は著者が何を「邪悪」と読んでいるのかを知ることが出来る。そして自分の身の回りにいる困ったちゃんに思いを馳せ、そしてその思いはめぐりめぐって自分自身の邪悪さを見つめる目となって返ってくる。

 現在進行中の著者の考えが飛躍のない論理で淡々と書かれている。そこには邪悪を論じることの迷いもある。しかし、その邪悪さによって、力のない子供が犠牲者になっている事実をこれ以上見逃すわけにはいかない、そんな精神科医の正義感による熱い思いと、冷静で科学的な分析とがぴったりと合わさって魅力的な本を作っている。もっとたくさんの人に読まれるといいと思った。




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