読書の記録

No.258 2008.2.3

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ジャージの二人 /長嶋有

(集英社 /2003年発行)

 第一回大江健三郎賞を受賞して以来、俄然注目したくなった作家さんです。いやあ、デビューのときはそれほど注目してなかったのです。同時受賞した吉村萬一さんの「クチュクチュバーン」の衝撃が強すぎて、長嶋さんのは普通じゃんとしか思ってなかったのですが、それがね、この人どんどんうまくなってますよ。いいですわー。

 この話は珍しく「僕」が主人公。この作者、男の方なんだけど、なぜか女の一人称で書く作品が多いのです。それも悪くないんだけど、この「僕」はとてもよいなあと思いました。よ。妻ともうまく行かず、職も失う。そんな現実から逃避するように山荘で避暑をする父に便乗して、ゆるゆるとした時間を過ごす。父は父で3回も結婚を繰り返した男で(「僕」は一回目の結婚の子)、やっぱり今の結婚もうまく行っていない。カメラマンで、独特のマイペースさで、漫画オタク。登場人物はみな肩の力が抜けたひょうひょうとした可笑しさがあって、生きる哀しさも漂わせながらも、とぼとぼと毎日を生きていく。

 大したことが起こってるわけじゃないのに、はっ!!とさせられる場面や行動や描写があって、それが実は大したことじゃないっていうギャップがユーモラスで、でもそのユーモラスの中に切実な悲しみがあって、なんだこりゃすげえじゃんと思いました。何より読みやすいのが素敵です。

 デビュー作「サイドカーに犬」の映画も予告編を見る限り面白そうだし、たくさんの人が彼の作品を読むといいなあと思いました。

単行本は大島弓子の装画。文庫もあるよ。


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