読書の記録

No.251 2008.1.8

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ようちゃんの夜 /前川梓

(メディアファクトリー /2006年発行)

 第1回ダ・ヴィンチ文学賞受賞作。さすがダ・ヴィンチってなわけで、かわいくて飾りたくなる表紙。作者写真も美しいし。でも中身はどうかなあ。久しぶりにこんなごめんなさいな小説読みました。

 主人公たちは高校生。私は塙ようこというクラスメイトと仲良くなる。彼女は他の子と接するときは明るくて楽しい塙ようこだが、私の前だけでは不思議な暗い変わった言動を見せる「ようちゃん」になる。多感な少女の友情を繊細な筆と鋭敏な感性で描いた…とか言われちゃうんだろうか。ようちゃんの「変さ」には一貫性も哲学も感じられず、本当にただ変なだけ。あぶない不思議ちゃん。しかも不思議っぷりに芯が通っていない。確固とした世界を持ってる不思議さではなく、ただばらばらに変なことを言ってるのを寄せ集めただけに思えました。 そこにはいないリスが見えると言ったり、小さい自分の分身が見えると言ったり、絵の具を指につけて画用紙の上にぽたぽた垂らして「あたしのあと」を残したり。……あ゛ー!!!ってなるわ。変具合が魅力的じゃない。もしかして統合失調症の幼児の話かなと思いながら読んだ。なにせ冒頭が「助けられないかもしれないと思った。彼女は助けなんてきっと求めてないんだろうと思った。」なので、統合失調症のようちゃんが死んでしまうか取り返しのつかない症状になる話かと思ったら、登校拒否以外は何も起こらなかった。あ゛ー!!!もう。

 我慢して最後まで読んだけど、嫌なものを読んだなあと思ってしまいました。少女趣味と少女を描くこととは違うんじゃないか。でもまあ比較的、この不思議ちゃんに憧れて自分も不思議ちゃんのフリをしようとするがなりきれない主人公はよく描けていたと思う。

 選考委員はこの作者のことを怪物とまで言ったらしい。ダ・ヴィンチという雑誌は好きで嫌い。形とコンセプトは好き。でも内容は嫌い。小説の表面だけの面白さと、そうでない面白さを区別してないから。見る目がないのよ。玉石混交で。このダ・ヴィンチ文学賞は今までにない文学をと銘打って作られたのに選んだのがこれかあと思って、ますます、あーあと思いました。ヴィジュアルには強いダ・ヴィンチ。装丁がさすがな感じで素敵なこの作品は、たくさんの本好き予備軍が手に取ることだろう。だからこそ、本当に面白い小説をちゃんと選んで欲しいのにな。残念です。




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