読書の記録

No.250 2007.12.19

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世間様かくありき /若合春侑

(集英社 /2001年発行)

 文学界新人賞受賞でデビューした若合春侑(わかいすう)さん。旧式漢字を駆使し、明治とか大正を舞台に女の業を描き出す作家さんです。

 女にしか書けない女を書いている。同性に嫌われるタイプの女を彼女は書く。男に頼りきりだったり、女の魅力でどうにかしてやろうというずるさがあったり、世間をなめて甘えてたり、あまり反省しなかったり。でも、そういうふうにしか生きられない業みたいなものが切実に感じられて、ひりひり感じる小説になっている。これといってとりえのない女の一人が、昔の抑圧的な境遇に押しつぶされそうになりながらも女ゆえのしたたかさで生き抜いていく、そんな人生を文字にあらわす作家だと思う。

 この単行本は、三つの短編が収録されているが、話は全部つながっていて一つの長編を読んだような満足感がある。離婚、目の見えない息子、若きヴァイオリン教師との恋愛、妊娠、政治犯の濡れ衣、戦争、強姦、息子の反抗期。物語の中で次々起こる事件は、とても俗っぽい。女性週刊誌やワイドショーのネタみたい。わたしはそれをどう評価していいのか分からない。そんな俗っぽいことを書かなきゃもっと文学として昇華されるのにとも思うし、そういう俗っぽいものこそが女の生(または性)と切り離せないものだというふうにも思う。どちらにせよ、自分が書くと決めたものに真摯な作家だと思う。また読みたい。




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