読書の記録

No.241 2007.10.21

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わたくし率、イン 歯ー、または世界 /川上未映子

(講談社 /2007年発行)

 この間、芥川賞候補になりましたやつです。なんじゃこのタイトルは。しかも歌手って何だよ。初出は早稲田文学かよ、などといろいろうさんくささ満載で読んでなかったのですが、ある人がこの本の著者近影がわたしに似てると言ったので、急に気になりだしたのでした。ブログの大阪弁でがががっと持ってかれて、歌まで聴いてみて、うわー、上手いじゃん、魂じゃん、とか感動して、写真見て、かわいいじゃん、ってか似てるってわたしかわいってこと、むふふ、とかなって、ようやくようやく、この本を読む機会に恵まれました。本屋にあまり置いてなかったよ、これ。

 ものすごいタイトルなんだけど、ちゃんとこのタイトルな話でした。自分の実体って何だろうどこにあるんだろう、脳だろうか、体だろうか、てか何でもいいならわたしはこの奥歯を自分とすることに決めた、という主人公の話です。密度の濃いこってりとした妄想が繰り広げられ、痛々しくて、すごく鬼気迫っていて、語り口が面白くて、自虐的で、わたしはこれを文学だなあと思いました。まあ例のごとく、芥川賞はやっぱり獲らないと思いました。わたしが気に入った候補作は獲らないので。

 小説の構成というか仕組み自体は、よくあるパターンだと思う。一人称の主人公の目から徹底的に書かれていた世界が、別の目から見るとすっかりひっくり返されてしまうという構造とか。でも、その構造に乗って、演じきった!という感じで、全然気にならなかったですよ。声ががんがん聞こえてくる小説でした。苦手な人は苦手かもしれないけどね。この人の書くもの、表現するもの、もっと見たい。




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