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サウンドトラック /古川日出男 (集英社 /2003年発行) 古川日出男の大長編。日本の地名を舞台にした近未来ファンタジー、かな。東京都のいろいろな地名が出てくるけれど、実際にその土地に思い入れがなくて地図で見たことしかないという人の方が違和感なく楽しめるかも。 無人島に流れ着いた二人の子供、トウタとヒツジコ。トウタは父子家庭で母性を徹底的に排除した父の教育方針のおかげで、六歳のくせに無人島でもサバイバルできる技術を持っている。ヒツジコと兄妹のように暮らしていた二人は、ある日発見され保護され、小笠原で中学生として生活することになる。中学卒業したヒツジコは東京へ行く。ダンスによって世界を解放することに目覚めたヒツジコ。ヒツジコと別れたトウタもやがて東京へ出て行き、物語はヒツジコサイドとトウタサイドに分かれ並行しながら進んでいく。音楽の喪失によってよりビビットに冷徹に世界を裁くことにできるトウタ。二人の冒険が始まっていく。 一見平凡な舞台に、異世界に切り替わるスイッチがばらまかれている。ヒツジコのダンスは見るものに感染する、という設定なんだけど、読んでいるこちらにも感染してくる。それがすごいと思った。彼の文章によって彼の世界に巻き込まれて、それがとても気持ちよかった。 ラストが納得いくかとか、つじつまとか、設定とか、まあいろいろ難点はあるけど、やっちゃえやっちゃえ、どんどんいっちゃえという感じで楽しめました。物語家が大法螺吹かなかったら一体誰がするっていうんだろう。恐れることはない。やっちゃえばいいんだ、どんどん。 |