読書の記録

No.234 2007.7.25

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肉触 /佐藤智加

(河出書房新社 /2003年発行)



 17才で文藝賞優秀賞を受賞した作品。例のごとくまた文藝出身女子高校生作家だよ。

 部屋でときどき奇声を発してしまう発作のある私は、定期的に部屋を変えなければならない。不動産屋に行く途中でふらりと旅に出ることを思いついて、会社もさぼって旅館にたどり着く。そこで、喋る猫と一緒に蛙の子の成長を見守りながら、姉との思い出を回想していく。小さな世界だけれど、その中で描きたいことを描ききった作品。タイトルもよく生きている。

 丁寧で文学的な描写たちに驚いた。単に今の自分の思いを綴りましたという小説ではなく、物語や世界を新たに構築しようとしている試みが見られた。その世界観は、オリジナリティがあるとは言えないけれど、はっとさせられるような設定や描写が出てきて、うーんんと唸りながら読みました。

 17才だからという色眼鏡で見てるせいか、主人公が社会人の男であって、男の「私」語りであるのに途中までずっと主人公は女の子かと思って読んでしまった。あと、頻繁に登場する理科の知識を使った描写(コロイドとか原子とか細胞とか)が、ああ高校生の理科だなあという感じでほほえましい。太宰や川端のような古典文学をちゃんと敬愛していて、あと学校の勉強もちゃんと頑張ってる女子高校生なんだなあという感じが見え隠れしてしまう。でも、その二点を除けば、作者の年齢とは全く関係なく面白く没頭して読めた。特に「姉」の存在感がすごかった。

 今後が楽しみな作家さん。というか、もういろいろ出してるから他の作品も読んでみようと思いました。




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