読書の記録

No.229 2007.7.5

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泣かない女はいない /長嶋有

(河出書房新社 /2005年発行)



 先日この方、第1回大江健三郎賞を受賞しました。大江さんがその年に刊行された本の中から一人で選ぶという賞。この作品ではないんだけど、この本読んだときになるほどなあ、さもありなんと思いました。人間を丁寧な視線で丁寧に描く作家だと思います。

 いつも女視点で女主人公で小説書いてる男性作家。男の人の書く女性一人称は好き。硬質でわたしにぴったりきて気持いい。事件が起きるわけでもなく、主人公が葛藤しているわけでもなく、でも地に足をつけて着実に真面目に生きている様子が描かれていて、地味なんだけどどこかユーモラスであったかくて、最後まで読んだら少しだけじんとするそんな話。

 表題作は下請けの小さな会社に就職した睦美の淡々とした日々を描いている。同じ事務仲間の女の子たち、倉庫で働く屈強な男たち、情けない社長、パートのおばさん、そんなどこにでもいそうな人たちがどこにでもいそうな感じで生き生きと書かれている。特に目立った事件やロマンスが起きるわけでもない日々。それがとてもリアルに表現されていたと思う。自分もその会社の中で働いているような気持ちになって読み終わった。

 タイトルの語が出てくる場面が秀逸。ああ、こんなふうに出てくるのかと予想を裏切られた。しみじみとほのぼのと静かに心がざわつく本でした。




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