読書の記録

No.228 2007.7.4

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ヘンリエッタ /中山咲

(河出書房新社 /2006年発行)



 2006年の第43回文藝賞受賞作。受賞当時高校三年生。わたしこれ応募して落ちた回なんで悔しさのあまり、えー、また若者かよー、どうせ若いだけの作品なんだろうと遠吠えてました。本誌に載ったときは読まなかったんだけど、ふと読んでみたら面白かったよ。若いからというんじゃなくて、文藝が求めているのはこういう作風で、それを書くのが若者に多いということなんだろうな。

 主人公のまなみは家を出て高校にも行かず、二人の女性と暮らしている。ぽっちゃりと太っていて大胆でアナイスアナイスの香水をつけていて人知れず片思いの恋をしてはその証として熱帯魚を買ってくる、みーさん。落ち着いていて優しくて穏やかだけど、ときどきなぜか三輪車を盗んできてしまう癖のあるあきえさん。この二人を仕事に送り出し、熱帯魚の世話をして、家事をして、ご飯を作って、帰りを待つまなみは家から一歩も外に出ることができない。そんなまなみを無理矢理外に出そうともせず、主人公自身も高校へ行ってないことや普通の生活と違うことに悩んだりせず、ただあるがままの状態を受け入れて生活している。

 その自然さが好感度の高い小説。大人を目の敵にしたり、わたしがわたしがと思春期の主張をすることもなく、肩の力の抜けた等身大の物語をつづっていく。かと思えば、はっとさせられる設定がいっぱいあって、退屈することなくどんどん読めた。川上弘美ジュニアという感じで今後が楽しみです。




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