読書の記録

No.227 2007.6.25

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生きてるだけで、愛。 /本谷有希子

(新潮社 /2006年発行)



 第135回芥川賞候補になった作品。のっけから本谷節炸裂で、少年漫画のような勢いでどわわーっと持ってかれるわけなんですけど、ラストは芥川賞は取れないなあという着地点で、そうかそうか残念というか納得というか。でも、芥川賞なんか関係なく面白いよ。いやむしろ、芥川賞取らない作品の方が面白いよ、なんて言ったりして。別の作品で候補になればよかったのになあ。「ぜつぼう」とか審査員好きそうなのに。ぜひもっとメジャーになってほしい。あんながつがつした作風の女性作家は貴重すぎる。

 母から遺伝した躁鬱症の主人公は、鬱のときは雨が降っただけで死にたくなるし昼間起きれないし、せっかくやっていたバイト先をやめてしまったり、奇行をくり返したりする。それでも前向きに力強く生きていく様子が、本当におかしくて悲しくていとおしい。本谷さんの文章って、凶暴で勢いがあって、でも本当はナイーブで愛があって、にやりと笑ってしまうけど心がちくりと痛んで切なくなる。前回読んだのは、不条理なくらい残酷なオチがあったりしたけれど、この作品はそんなことなくて、生きてるだけで、愛。というタイトルが身に染みる愛に溢れた小説だったと思う。この人の描く人物は脇役から主役までみんな面白い。

 続編のような書下ろし短編「あの明け方の」も収録。




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