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幻をなぐる /瀬戸良枝 (集英社 /2007年発行) 第30回すばる文学賞受賞作「幻をなぐる」と、他「鸚鵡」を収録。この人の文章は面白い。肉薄というか生々しいというか。「幻をなぐる」の方では文章から羞恥と怒りが怨念のように湧き出ていて、一方で「鸚鵡」の方は、しんと静かな水面のような静かな文章の中から繊細さとエロスが湧き出てくる。 「幻をなぐる」は、自意識と羞恥心で膨れ上がった女「中川」が、優しくてエロくて調子のいい「奴」に恋してしまうのだが、奴は知り合った女みんなに同じように優しく甘い言葉を囁き同じようにセックスしていたと知ったことで、中川の心は憎しみと愛情の間を揺れ動き、煩悶し続ける。恋する乙女の悩みとかそんな生易しいものではない。見ていて滑稽で醜くてしょうがない様子が熱苦しい筆で、でもどこか滑稽な語り口でつづられる。 「鸚鵡」は、文学少女趣味的な粗筋ではあるのに、静かで情緒的でエロくて生々しい文章のせいで、目が離せない、息もつけない、芸術的な小説になっている。自殺した姉を持つ葉子と姉の女友達服部さんが淡く絡み合うところから始まり、やがて濃密に溶け合っていく。鸚鵡の羽の感触、服部さんの唇の感触、繊細な皮膚感覚の描写が印象的な小説だった。 面白かった。これで新人作家ですか。こわいです。今後が楽しみです。近いうちに芥川賞とか取るんじゃないでしょうか。 |