読書の記録

No.217 2007.4.1

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共生虫 /村上龍

(講談社 /2000年発行)



 村上龍は結構好きなんですがあたりはずれがあると思う。あと何冊も読んでるとエログロ描写にあてられてもうお腹いっぱいという状態になる。というわけで、しばらく読んでなかったんだけど久々に読んでみました。

 引きこもりの少年が独自の世界観を獲得して外へ出て行く話。その世界は常識で考えたらクレイジーで妄想じみていて格好悪くて病的なんだけど、村上龍のすごいところはその非常識な世界こそがもしかしたら本当の世界なのかもしれないと思わせてくれるところ。最初は危ない主人公だなあと思いながら読んでいるのに、だんだん主人公に感情移入していってしまう。主人公の少年に徹底的に寄りそっているところが面白い。  引きこもりの少年が妄想を膨らませて外の世界に暴力を用いて働きかけるという話で、阿部和重の「ニッポニア・ニッポン」を思い出したけど、あちらは少年が真剣になればなるほど痛ましく思えたのに、村上龍のこの作品は話が進めば進むほど主人公はかっこよくなり応援したくなっていく。主人公の世界がこちらを侵食する。常識が変えられてしまう。面白かった。

 もう一つ、主人公が非社会的な行動を取った場合の後始末として、警察に捕まるという現実的過ぎる結末を避けるためか、よく主人公の死によって始末をつける作品がある。一つ前の感想に書いた「おしゃべりな犬」も実はそれだし(ネタばれすまん)、「i'm sorry mama.」もそうだった。そういう作品に出会ったとき、今までのは何だったんだろうと白けてしまう場合がある。安易過ぎやしないかと思ってがっかりする。だが、この点においても、この作品はわたしを満足させてくれましたよ!!龍ちゃん偉い!!だてに長年作家やってない!!

 ちなみに珍しく(?)エロ描写がない。グロはあるけどちゃんと必要なグロだと思ったので全然不愉快じゃなかった。ああ、いい小説だった。




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