読書の記録

No.216 2007.3.26

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おしゃべりな犬 /玄月

(文藝春秋 /平成15年発行)



「蔭の棲みか」で第122回芥川賞を受賞した作者の長編。舞台は大阪。韓国人が集まってコミュニティを作っているチンゴロ村。そこで少年時代を過ごした主人公の人生が延々と語られる。

 少年時代のいろいろなエピソードは面白いけれど、後々の話とあまり関係がないように感じた。シンナーもどきの薬剤でらりってぼろぼろになったり、親を殴ったりヒモ同然で暮らしたり、自分は不能だから別の男たちに彼女をレイプさせて、そのときに出来た子供を自分たちの子として育てることになったり、自分に惚れたソープ嬢にひどい扱いをしたあげく殺してしまったり。そんなエピソードが語られるわりには、主人公は害もなくどちらかといえば弱者的な人物像で、反省も葛藤もなく、幸せな生活を送っている。

 いやあ、何だろうこれ。と首を傾げながら読んでいたら、だんだんこのまとまりのなさが文学じゃないのか!いいじゃないか!と思えてきたのに、最後の最後で悪い意味で小さく文学風にまとまってしまったので「なーんだ」とがっかりした作品でした。

 とめどない昔話を聞いている感じ。でもまあ退屈はしなかった。うまいと思うけれども。


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おしゃべりな犬

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