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I’m sorry,mama. /桐野夏生 (集英社 /2004年発行) 娼婦の住まう置屋で母親も父親も知らずに育ったアイ子は、気に入らない人間があればガソリンをぶっかけて焼死させてきたし、盗みも嘘も誘拐もためらわず行う中年の女。彼女は、図太くずるく、そして醜くこの世を生き抜いていく。生まれに対する悩みも良心の痛みもない。彼女にある人間らしい心といえば、顔も知らない母をきっと素敵な人間だと想像していつか会いたいと願い続けることだ。 この話に登場するのは、中年や壮年の女たちである。しかもみんな醜い。心も姿も生活も。読んでて楽しくなるものじゃないのは相変わらずだけども。でも今回は、登場人物たちが浅かった。ただの外道で終わってしまった。闇の奥にある何かまで書ききれてない感じがしたし、オチもイマイチだった。 三人称の神視点や、一人称で複数の人物が喋る形で、いっぺんにたくさんの人物の心中や人生を語るという手法は、エンターテイメント小説のおはこで、桐野さんのおはこでもあって、とっても便利な手法なんだけども。枚数も増えるし。いろいろな視点から語られたら一つの事件でも膨らんで読者的にも面白いし。でも、その手法は、最終的に一つの大きな流れに乗って何かこう作者のやりたいことに向かって収束、または発散していく過程に小説のカタルシスがあるんだと思います。それがなければ、個々の事例検討みたいな感じで、こんな人もいまして、こんな人もいますね。世の中いろいろな人がいますね。というだけで終わってしまう。週刊誌の記事みたいになる。 まさにそうなってしまったなあ、と思った小説でした。気持ち悪い人たちの事例集みたいな感じでした。でもまあ、それでも退屈せずに一気に読めるのはさすがとしかいいようがないんだけども。読んでしまったけどどうしてくれるんだよーと思うけど。彼女の作品の中ではおすすめしない作品でした。 |