読書の記録

No.212 2007.2.16

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わが悲しき娼婦たちの思い出 /G・ガルシア=マルケス

(新潮社 /2006年発行)



 2004年に書かれて2006年に邦訳された新刊。ノーベル賞作家のこの人ですが、おお、まだ生きていらしたのか!と思いました。本って時代を超えるから十年前のものでも今のものでも関係なく読んでしまう。気がついたら贔屓の作家がこんなに年を取っていたと驚くこともしばしば。まあ自分も年を取っていっているのですが。ガルシア=マルケスは「百年の孤独」を読んで以来大ファンです。南米が舞台で、ノスタルジックな世界観、現実と夢の間を行き来するような俯瞰した物語風の語りが好き。

 この作品の扉には何と川端康成の「眠れる美女」の冒頭が引用されている。こんなとこで出会うとは思わなかったよ。川端康成に。そして本文の冒頭はこんな出だしで始まっていきなり引き込まれてしまった。

(引用:本文の冒頭より)
満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。


 主人公は長年通信社で働き、現在はコラムを連載し、独身で細々と暮らしている九十歳間近の健康な老人である。なじみの娼家に通うのを若い頃からの長年の習慣にしている。そこの女主人に冒頭で思いついたことを頼んで手配してもらうが、いざその日になるとすやすやと眠っている健康的な少女にいとしさを感じて眺めるだけで終わってしまう。彼は九十歳にして初めて人を好きになる。

 物語全体を通して明るく楽観的で静か。ひっそりと明けた朝のようなすがすがしさがある。年を取る、という事実をそのまま受け入れ、淡々と今日を生きていることに感謝しながら生きる主人公が素敵だった。




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