読書の記録

No.210 2007.2.3

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東京夜の駆け込み寺 /酒井あゆみ

(ザ・マサダ /1995年発行)



 ヘルス、本番ホテトル嬢などを経験し体を壊し、ある男に恋して一緒にAVマネジメント業を始めたが借金が膨らむばかり。人脈も経験もあるから上手くいくと思っていたのに、どうやら「商品」である女の子への思い入れが強すぎてビジネスとしてうまくいかない。そんな作者が、出会った女の子たちを描いたドキュメント集。

 装丁やタイトルはおやじ週刊誌のようなノリだけど、女の子の視点から別の女の子を語っているので、羨望や嫉妬や同情や共感がそのまま書かれていて、女の人が読んで面白い本になっていた。男の人のレポートだと、性に対する奔放さに焦点を当てるか、悲劇として語られるか、どちらかに偏りがちで、「自分とは関係ない世界」というスタンスを取りがちだと思う。珍しい標本でも説明するような。でもこの本は、当事者の実感が伝わってきて、しかも自分語りではないので、冷静な第三者の目が光っているわけで、読んでいるうちに「あーあ、そんなことしてバカだなあ。でもそのときはしょうがなかったんだよなあ」という思いにさせられてしまう。なんか友達の悩み相談を聞いてるみたいな気分になる。もうしょうがないなあと思いつつ、自分には関係ないよとは思えない。

 事業に失敗した親の借金、ギャンブルにつぎ込んで膨らんだ彼氏の借金。それらを返すために体を売る女の子たちが登場する。普通の不自由ない状況だけど金を稼ぐことが快感になって風俗業を続ける女の子も登場する。体を売ることで稼げるお金の額はOLとは桁違いで。一度手に入れてしまうとなかなか業界から抜け出せなくなる。作者がお金が麻薬だと言っているのが面白いと思った。

 (引用:「はじめに」より)
 原稿を書き終え読み直してみると、"金、金"と言う仮面の下に、それぞれ彼女たちはじつに人間臭い欲望や弱さ、もろさ、それにコンプレックスを持っていることに気づく。
 これはとりも直さず、私自身の心でもある。彼女たちが傷つきやすくて、いつも不安なところも私と同じだ。それを隠すために突っ張っているところもそっくり。(中略)
 多くの子は、お金という麻薬に冒され体も心も粗末にする。

 あ、文庫の装丁はかわいらしいね。あら、この人、いっぱい著書がある!文章もうまいし目の付け所も魅せるし、向いてる職業だったのかな。って調べたら、おおお、この作品で作家デビューした後も作家として活躍してるみたい。そうか。よかった。なんかちょっと嬉しい。…という気分になってしまう本です。作者の人柄が文章からにじみ出てるんだよね。他のも読んでみようっと。



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