読書の記録

No.203 2007.1.11

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フラニーとゾーイー /J・D・サリンジャー

(新潮文庫 /昭和51年発行)


 うちに眠っていた本でしたが、ふと手にとって読んでみたら面白くて止まらない。ああ、すごい好きな小説に出会えたという感じでした。星10個の満点。星10個ってのは、小説として出来がいいとかそういう問題じゃなくて、大好き!という感じです。本当に好きになる小説ってのは、恋みたいなもので、優れてるとか秀逸だとか技術だとか客観的な評価はできなくて、読んでるわたしにとって読みたいことや聞きたいことや会いたい人がいっぱい書いてあって、ああもう好き好きという感じになる。そんな本でした。

 主人公はグラース家7兄弟の末っ子の妹フラニーと、その上の兄ゾーイー。グラース家は子供のときに「これは神童」というラジオ番組に出続けた秀才ぞろい。しかも長男、次兄とフラニー、ゾーイーの間は15も年が離れてるので、長男次兄は彼らの教育係になっていて一風変わった教育をしていた。
 そういう教育を受けた秀才フラニーは、世の中の人や大学の愚鈍な人たちに我慢が出来ないし、恋人とも言い争いをしてしまう。そして神の問題について深く悩んでご飯も食べずに寝込んでしまう。それを心配する母親は、家に残っている唯一の息子であるゾーイーにフラニーをご飯を食べるように説得してくれるように長々と頼む。2つしか年が離れていないゾーイーは、兄貴風を吹かしすぎたりして一回は説得に失敗するが、もう一度説得を試みることにする。

「フラニー」と「ゾーイー」という二編の中篇から成り立っている物語。ほとんどが会話文。でも会話や会話の端々に現れる動作から、登場人物の性格や人柄や思いが生き生きと伝わってくる。そして会話の内容も何度も読みたいような心に響く言葉でいっぱいだった。

 サリンジャーはこのグラース家の他の兄弟をシリーズで書いていくと言ったらしいのだが、もう一遍、次兄と長男の話の作品があるだけで、出版してないらしい。発表してないだけで書いてるんだろうか。出版もしていないし、マスコミにも登場しない隠遁生活を送っているらしい。こんな記事を見つけた。

(記事引用)
サリンジャー氏は1974年に20年近くの沈黙を破ってニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙の電話インタビューに応じ、次のように語った。「作品を出版しないでいれば、驚くほど平和な毎日だ。何かを出版すれば私の個人的な生活がひどく脅かされることになる。私は書くのが好きだ。書くことを愛している。でも今は自分自身のため、自分の喜びのために書いているだけだ」



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フラニーとゾーイー


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