お縫い子テルミー /栗田有起
(集英社 /2004年発行)
栗田さんのちょっとずれた不思議な世界観が好き。期待通りその世界観を楽しめた一冊でした。
小さな島に住み、祖母も母も自分の親子三代で顧客の家に居候して手縫い仕事をするのを生業にしている照美は、十五になったときに島を出て、歌舞伎町でアルバイトしながら「お縫い子テルミー」として独立する。音楽に命をかけていて女装してスナックで歌うシナイちゃんに抱く恋心を抱いたり、縫い子のプロとして誇りや、布への愛着の描写などが生き生きと伝わってきて、にこにこしながら読んだ。栗田さんの書く人物は、どこか浮世離れしていて魅力的で、とぼけた会話の応酬はセンスがよくて面白い。
ただし欠点があって、世界だけで終わってしまうこと。結局テルミーのシナイちゃんへの思いはどうなるの、とか、テルミーはどうしたいの、とか。そういうことを最後まで読んでも投げっぱなしのまま終わってしまうのでストーリーのカタルシス?とかいうものが足りない。なんか面白かったけど、あまり残らないなあという感じ。でもまあ楽しかったからいいか、という感じでもあるけど。
もう一作収録されている「ABARE・DAICO」は、小学生が主人公。だらしない母の代わりに料理や掃除をこなす「ぼく」は、体操服をなくしたので自分でどうにかしようとアルバイトを始める。小学生の目線が自然で、いやみがない。これもにやにやしながら楽しく読んだ。
センスはいい。タイトルもいつもいい。でも漫画みたいな感じかなあ。今後、小説としての成長に期待する作家さんかな。また新作出たら読みたい。
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