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アンボス・ムンドス /桐野夏生 (文藝春秋 /2005年発行) さて、桐野さんの短編はどうでしょう、と思って読んでみました。オール読物などに掲載された7編の短編集。 表題になってる短編「アンボス・ムンボス」とは両方の世界、新旧二つの世界という意味。語り手の女性は元小学校の教師。教頭と不倫関係にある彼女は夏休みに不倫旅行に海外に出かけている間に生徒の一人が事故で亡くなってしまう。そのせいで不倫関係は露呈され、相手の教頭は自殺してしまう。事故にまつわる不審なエピソード。子供たちのずるさと残酷さを感じさせながら真実は闇の中である。 寺の跡取りのために母子二人の生活に新しく加わった義父と、異父姉弟の弟の存在を疎ましく思い、いなくなればいいのにと願っていた主人公の前に、人を殺す能力があるという不思議な子供が現れる「毒童」。今は亡き偉大な作家である父を持った主人公のもとに文章を書いて欲しいと編集者がやってくる「浮島の森」など。 どれも短編に使うにはもったいない人生模様や設定が折り込まれていて、この一冊でいろいろな種類の人生を楽しめてお得な感じがした。ただし、長編なら脇役に過ぎない憎まれ役が短編では主役になったりしてるので、ラストが救いのないまま終わったりする物語もあるので後味はイマイチ。まあそれこそがリアルな人生という感じなのかもしれない。 短いけど物足りなさは感じない。さすが。うまいなあと思いました。 |